親が亡くなったので、土地を相続したが使用用途もないので売却したいと考えている方、初めてのことでまず何から手を付けたらよいのか分からず、ただ時間だけが過ぎさり手付かずの状態で放置していませんか?
もし相続した土地がゆかりのない地方の土地であれば、土地評価額がどれぐらいになるのか見当もつかず思案に暮れていませんか?
どうやって相続した土地を売却すればいいのでしょう?
相続した土地を売却するまでの手順や、相続や売却にかかる税金など相続した土地を売却する際に発生する諸々のことを詳しくご紹介していきます。
また、土地売却にかかる税金をできるだけ節税するためのポイントなども併せて解説していきます。
目次
相続した土地を売却するためには
親から土地を相続したものの、遠方に住んでいるなどの理由からその土地を利用できないため売却するためには、どのような手順で行えばよいでしょうか?
ここでは、相続した土地を売却するための手順をご説明します。
遺産分割協議書を作成する
まずは、相続する相続人同士で相続財産を分割する内容を話し合いましょう。
相続する人が1人しかいない場合については分割せずともよいので、この項目は不要となります。
民法上では、相続する人を相続人と表し、お亡くなりになった方を被相続人と表します。
相続人が複数存在しているのであれば、共同相続人と呼び、被相続人と相続人の関係により、民法では相続する割合や順位が定められています。
遺産分割について話し合わず、法律により定められている相続割合に従って分割する場合は遺産分割協議書を作成しなくても問題ありませんが、相続人間の協議の元相続割合を決める場合には遺産分割協議書の作成が必須となります。
遺産分割協議書を作成するにあたり、定められている形式はありませんが、一定条件を満たさなければ遺産分割協議書として公に認められないことがあります。
通常であれば、専門家に作成を依頼しますが、ご自身で作成する場合は以下の条件に注意して作成してください。
遺産分割協議書を作成する際のポイント
相続人について明記
被相続人の、名前や本籍、住所と死亡日について、情報を明記しておかなければなりません。
相続する財産について詳しく記載
土地、建物を含む不動産関係、金融資産等、相続することになる財産を全て記載しておきます。不動産については、所在する地番や地目、地積などについても詳しく記載しておきましょう
共同相続人がどの財産を相続するのか
どの財産をだれが相続するのかを1つずつ記載します。
もし、相続するために条件が付いている場合や代償金などの取り決めがされたのであれば、その内容も明記しましょう。
共同相続人が全員で署名し、実印で押印
共同相続人が競技で合意したことの証拠となるように、全員の署名と実印で押印をおこないます。この場合、かならず実印で押印しておきましょう。後々に起こり得るトラブルを回避するためにも、自筆で署名し住所の記載もしておきましょう。
遺産分割協議をおこなった年月日を明記
遺産分割協議を行った年月日を明記しておきます。
もしも、相続人が署名と押印をした日付が違う場合については、最後に署名と押印をした日付を成立日として記載しておくことが一般的です。
取り決めた遺産分割内容については、書き換えができないようにボールペンなどで作成しておきましょう。
また、複数枚に渡り協議内容を記載していた場合には、各ページの境目に共同相続人全員の実印で割印を行わなければなりません。
相続人を変更する相続登記をする
遺産分割協議書の作成ができると、次は相続した土地の所得権を変更する手続きの「相続登記」を行います。
土地を相続したらすぐに売却したいと考えても、所有権を一度相続人へ移さなければなりません。
所有権移転登記を申請する際は、相続した不動産を管轄している法務局へ所有権移転の申請を行います。
相続した不動産は、被相続人の住所地とは限りませんので良く確認しておきましょう。
この時必要となる書類は以下の通りです。
登記申請書
法務局のホームページから申請書をダウンロードし手記入するか、必要事項を普通の白いA4用紙に記載しても大丈夫です。
被相続人の出生まで遡る除籍・改製原戸籍謄本と被相続人の死亡が記載された戸籍謄本
被相続人の戸籍謄本が必要となります。
もし、被相続人の本籍が何度も移動している場合は、役所で「相続で使用するため、できる限り遡って戸籍謄本が欲しい」と伝えましょう。
被相続人の住民票と除票または戸籍の附票
被相続人を証明する書類となりますので、本籍地が記載されているものを用意しましょう。
相続人全員の戸籍謄本
被相続人が亡くなって以降の相続人全員の戸籍謄本が必要です。
この場合、相続しない相続人であっても戸籍謄本を用意しなければなりません。
住民票または戸籍の附票
不動産を相続する相続人の住所を証明する書類として必要になるため、不動産を相続しない相続人は必要ありません。
遺産分割協議書と印鑑証明書
遺産分割協議書に押印している印鑑の証明書を添付するため、必要になります。
不動産の名義を被相続人からそれぞれの共同相続人へ変更するには、遺産分割協議書に記載された割合で相続登記を行う必要があります。
固定資産評価証明書
毎年4月1日以降になると固定資産税評価証明書は最新になりますので、必ず最新の年度のものを添付しましょう。
その他
相続人より代表として1人が登記申請をおこなうのであれば、他の相続人の委任状を用意しておきましょう。
被相続人を中心として、相続人が何人いてどんな続柄であるかを記載した相続関係説明図が必要になる場合があります。
決められた書式はありませんので、簡単に作成できます。
複数の不動産を相続すると、名義人が被相続人でないときは相続手続きを再度やり直す必要がでてきますので注意が必要です。
やり直しを防ぐためにも、登記済証の記載事項を確認し、名義人に間違いがないか確かめておきましょう。
父親名義の不動産だと思っていたところ、実は母親名義の不動産であった場合はよく耳にすることです。
相続登記と合わせて行う登記で所有権移転登記と持分移転登記があります。
共同相続人のうち1人の相続人が不動産を相続する場合は所有権移転登記、複数の共同相続人で共有する場合には持分移転登記が必要となります。
ここまでの手順が完了すると、不動産の遺産の名義変更手続きが終わり不動産を自由に売却できます。
名義が変更すると、固定資産税が相続した人に課税されます。売却したいと考えるのであれば、次に不動産会社に仲介を依頼しましょう。
なるほどです!
売却のために仲介業者を探す
早く手放したいと考えるのであれば、不動産会社に買主になってもらい売却することがおすすめです。
仲介より買取のほうが売買契約はスムーズに進み、急ぎで資金がいる場合には便利な方法です。
スピード感はありますが、仲介と比較すると査定金額は低くなる傾向があります。
では、売却までに時間が費やしても問題ないので、できるだけ高額で売却したいと考えるのであれば最適な業者を選ぶことです。
不動産会社と言っても、どれも同じ特徴で、同じ動きをしているとは限りません。
マンションや一戸建てなどの建物が得意な不動産会社があれば、土地の売買が得意な不動産会社もあります。
不動産会社によっては、全く同じ物件を取引したとしても大きな差が生じることもあります。
まずは何社からか見積をとり、明細に注目し比較しましょう。
金額だけに着目すると、査定額を高額に設定しているだけかもしれません。
査定額は販売額ではありませんので、ここだけに気を取られると後で痛い思いをする可能性もあります。
見積の書類だけに目を通すのではなく、営業の方にさまざまな質問をしてみるとその不動産会社の特徴をつかむこともできます。
過去の実績を教えてもらうのも一つの手です。
話を通して、「この人になら大切な資産を預けても大丈夫だ」と信頼できる相手を見つけることもできます。
もし、途中で信頼できないと感じたら、営業担当を変更することは可能ですし、仲介業者を変えても問題ありません。
相性が良い不動産会社を探すと同時に、売却したい不動産の市場価格を調べておくことも大切です。
インターネットや不動産会社から、同じような物件の価格帯を調べておくと相場を掴むことができます。
土地を売却する
信頼できる不動産会社が決まると、次は不動産会社との手続きを始めます。
通常の土地売却方法と同じ手順で、相続した土地を売却できますので、難しい手続きなどはありません。
不動産会社に相続した土地を売却する旨を伝えると、不動産会社が物件の調査や価格の査定を行います。
査定額に折り合いが付いたら、正式に仲介を依頼するために媒介契約を結びます。
その後、買主が見つかれば売却に関わる交渉をして、売買契約を結びます。
土地の決済が行われ、買主に引き渡しが完了すると売買は終了となります。
地目が「田」「畑」の場合は注意!
土地を売却する時のポイントとしては、所有している全ての土地が自由に利用できるわけではありません。
地区によっては利用目的に制限がつけられている場合があり、不動産登記法で定められた地目は23種類に分類されています。
一部抜粋して、どのような地目があるのかご紹介いたします。
田 | 農耕地で用水を利用して耕作する土地 |
畑 | 農耕地で用水を利用しないで耕作する土地 |
宅地 | 建物の敷地、および建物の維持もしくは効用を果すために必要な土地 |
山林 | 耕作の方法によらないで竹木の生育する土地 |
原野 | 耕作の方法によらないで雑草、かん木類の生育する土地 |
牧場 | 家畜を放牧する土地 |
池沼 | かんがい用水でない水の貯留池 |
鉱泉地 | 鉱泉(温泉を含む。)の湧出口及びその維持に必要な土地 |
上記のように、土地には宅地以外にもいろいろな種類があります。
もし、地目が「田」や「畑」の土地に家を建てた場合は、地目が「宅地」に変更するために申請します。
これを怠った場合は、10万円以下の過料がかせられることもありますので、忘れずに申請しましょう。
しかし、「田」や「畑」の地目については「宅地」に変更できないこともあります。
「農地法」で定められている「田」や「畑」であると、自由に売買や貸借、転用ができません。
どうしても地目を変更して宅地にしたい場合は、農業委員会や都道府県知事の許可を得なければなりません。
「田」や「畑」が簡単に売買できないように定められている理由は、農業の振興と周辺の農業への悪影響を防ぐため定められたものです。
農地法で定められた田や畑を売却するのであれば、専業農家から専業農家への売却は問題なくできますが、専業農家から兼業農家への売却は許可がおりないケースもあります。
このような場合は、不動産の専門家である不動産業者に相談することをおすすめします。
現金を相続人間で分ける
土地を売却した現金を、相続人間で分けます。
遺産分割協議で先に定められた割合通りに分けます。
もし、相続する人が1人であれば、この項目は必要ありません。
土地の売却は課税対象となりますから、相続した人が全員で税金を支払うこととなります。
では、相続した土地にはどのような税金が課税されるのでしょうか?
次の項目でご説明いたします。
相続した土地を売却する際にかかる税金について
土地など不動産を親から相続すると、相続税がかかりますが、土地を売却すると課税される税金があります。
その種類と内容は以下の通りです。
税金の種類と内容
税金の種類 | 説明 | 税額 | |
---|---|---|---|
①登録免許税 | 相続登記の名義変更にかかる税金 | 不動産の価額の0.4% | |
②印紙税 | 売買契約書に貼付する印紙代 | 売買契約書の金額に応じて2千円〜10万円 | |
③譲渡所得税 | 相続した土地の売却で出た利益に対してかかる税金 | 所有期間5年以下 | 譲渡所得の30% |
所有期間5年超 | 譲渡所得の15% | ||
④住民税 | 相続した土地の売却で出た利益に対してかかる税金 | 所有期間5年以下 | 譲渡所得の9% |
所有期間5年超 | 譲渡所得の5% | ||
⑤復興特別所得税 | 令和19年まで上乗せされる所得税 | 所有期間5年以下 | 譲渡所得の0.63% |
所有期間5年超 | 譲渡所得の0.315% |
次に税金の内容や注意点、節税ポイントなどをご説明します。
登録免許税
登録免許税法とは
登録免許税法という法律が定められており、「登録免許税について、課税の範囲、納税義務者、課税標準、税率、納付及び還付の手続並びにその納税義務の適正な履行を確保するため必要な事項を定めるものとする。」(昭和42年法律第35号・登録免許税法より)と記されています。
簡単にご説明すると、土地や建物を買った人の所有権を登記する際に国に治める税金のことです。
土地の所有権移動登記や中古住宅などの所有権移転登記にかかる税金は2.0%となります。
登記の種類と登録免許法の税率
登記の種類 | 登録免許税の税率(本則) |
---|---|
所有権移転登記(土地) | 評価額×2.0% |
住宅用家屋所有権保存登記(新築建物) | 評価額×0.4% |
住宅用家屋所有権移転登記(中古建物) | 評価額×2.0% |
抵当権設定登記(住宅ローン借り入れ) | 借入額(債権額)×0.4% |
上記のように登記の種類により税率が変わります。
例えば、固定資産評価額が1,000万円の土地を相続し、所有権移転登記をした場合の計算式は、
- 1,000万円×2.0%=20万円(登録免許税)
となり、登録免許税は20万円となります。
所有権移転登記を複数に渡り申請する場合は、まとめて合算して申請ができます。
土地を売却する際にかかる登録免許税を納税する人は「買主」になります。
しかし、必ず買主が税金を負担しなければならないわけではないので、当事者の話し合いで折半して欲しいと持ちかけられることもあります。
登録免許税の軽減措置について
登録免許税には特例で軽減措置があります。
この軽減措置を利用すれば、節税対策に役立ちます。
登録免許税の軽減措置について
申請内容 | 通常 | 特例利用後 |
---|---|---|
売買による建物の移転登記 | 20 / 1,000 | 3 / 1,000 |
抵当権設定登記 | 4 / 1,000 | 1 / 1,000 |
特定認定長期優良住宅の所有権の保存登記 | 4 / 1,000 | 1 / 1,000 |
認定低炭素住宅の所有権の保存登記 | 4 / 1,000 | 1 / 1,000 |
特定の増改築がされた住宅用家屋の所有権移転登記 | 20 / 1,000 | 1 / 1,000 |
上記の軽減措置を利用するためには一定の条件をクリアしなければなりません。
- 物件が居住用の建物であること
- 新築または、購入後1年以内に登記したもの
- 延床面積が50㎡であること
条件が揃っていることが確認できれば、「住宅用家屋証明書」が必要になります。
登録免許税の注意点について
登録免許税は基本的には買主が支払うことになる税金ですが、所有権登記に問題がある場合については違います。
登記している住所と、売主の現住所が違うのであれば、所有権移転登記の手続きを行う以前に住所変更登記の手続きが必要になります。
そして、売却する不動産が抵当権付きであると、トラブルの原因ともなる可能性があるため抵当権抹消手続きを行いましょう。
抵当権とは
お金を借りた時に万が一、借りた人が返済できない場合に、土地や建物を担保とする権利のことです。
抵当権付きの不動産を購入し所有権移転登記の手続きを行っていても、売主の返済が滞ると債権者は抵抗権を適用して競売にかけられることがあります。
印紙税
印紙税とは
さまざまな契約書をかわした際に課税される税金のことです。
契約金額に合わせて、支払う税金が異なります。
以下の表を参考にご覧ください。
契約金額 | 本則税率 | 軽減税率 |
---|---|---|
10万円を超え 50万円以下のもの | 400円 | 200円 |
50万円を超え 100万円以下のもの | 1千円 | 500円 |
100万円を超え 500万円以下のもの | 2千円 | 1千円 |
500万円を超え1千万円以下のもの | 1万円 | 5千円 |
1千万円を超え5千万円以下のもの | 2万円 | 1万円 |
5千万円を超え 1億円以下のもの | 6万円 | 3万円 |
1億円を超え 5億円以下のもの | 10万円 | 6万円 |
5億円を超え 10億円以下のもの | 20万円 | 16万円 |
10億円を超え 50億円以下のもの | 40万円 | 32万円 |
50億円を超えるもの | 60万円 | 48万円 |
譲渡所得課税
譲渡所得課税とは
土地や不動産等を売って所得を得た利益にかせられる税金のことです。
この所得は、他の所得と分離する形で所得税と住民税が課税されます。
売却で得た利益の全てに税金がかかるわけではなく、マイナスになる場合には課税されません。
譲渡収入金額-(取得費+譲渡費用)=譲渡所得
譲渡所得-特別控除=課税譲渡所得
この場合の相続における譲渡所得課税については、不動産を売却した際の所得から最高で3千万円まで減額される制度が設けられています。
3千万円も減額できますので、ぜひ利用したいところですが制約があります。
- 昭和56年3月31日以前に建築されている
- 区分所有建物登記がされている建物ではない
- 相続前、亡くなった方以外に誰も居住していない
譲渡所得課税を減額する措置が、この他にも設けられています。
それは、相続した土地を3年10カ月以内に売却した場合です。
相続した財産を売った金額から相続税を差し引けます。
譲渡収入金-(取得費+売却した不動産の相続税+譲渡費用)-特別控除額
相続財産を売った場合の所得費から軽減されるためには、以下のような制約があります。
- 相続から不動産や財産を譲り受けた者
- 不動産や財産を譲り受けた者が相続税や課税対象
- 不動産や財産の相続を開始する翌日から申告期限の翌日以後3年以内に売却していること
住民税
不動産を売却したことで得た利益には、所得税と住民税がかかります。
住民税は、所有してから売却した年の1月1日までの保有年数が5年以上か否かで税率が変わります。
この差で税率が倍に膨れ上がるので、保有年数が5年を超えられそうな場合は注目して欲しいポイントです。
住民税については、保有年数が5年以下の場合は税率が9%、5年を超えれば住民税率が5%です。
また、住民税と同じくして所得税も同じ条件で税率に変化が表れます。
5年未満であれば所得税の税率が30%、5年を超えれば税率は15%。
保有年数の判定基準となる5年については、亡くなった方から相続した日を開始日とするのではなく、亡くなった方が不動産の所有権を得た日からカウントします。
復興特別所得税
平成23年12月2日の東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法(平成23年法律第117号)が交付され、「復興特別所得税」及び「復興特別法人税」が創設されました。(国税庁・個人の方に係る復興特別所得税のあらましより)
2013年1月1日から2037年12月31日までの間、所得税額の2.1%が課税されます。
相続した土地を節税する時のポイント
ここでは相続した土地や建物にかかる税金を節税するポイントをご説明します。
所得費課税の特例について
相続した土地や建物にかかる相続税を経費として認めるという制度です。
相続後から3年10カ月以内に売却すれば、特例に該当します。
住居用不動産の特別控除
譲渡所得税の特別控除の中でも代表的な制度となり、売却した利益に対し3千万円までは課税対象から除外できるという制度です。
居住していない日から3年以内に売却すると、得た利益から3千万円を差し引いて計算してくれます。
きっちり3年以内ではなく、正しくは3年目の1月31日までに売却すれば問題ありません。
また、相続した家屋を適用期間内に取り壊すと、取り壊しが行われた日から1年以内に売買契約を結んだことや、敷地が使用されていなかった時に限ります。
住居用不動産の特別控除は控除額が高額になるため、ぜひとも利用したい制度ですが、やはりこの特例にも制約が存在します。
不動産を自らが、居住のために使用した建物や土地のみ適用します。
例えば、亡くなった方と相続する人が同居していると、相続する人が住んでいる家屋が対象になります。
相続する人が同居していなかったが、控除を利用したいがために、亡くなった後に居住したとしても、一時的な居住とみなされ控除対象から除外されます。
相続空き家の特別控除
耐振性が低い空き家が多く、老朽化のため倒壊する危険性が社会問題となっています。
相続などで譲り受けた空き家を売った場合、3千万円の当別控除を利用できる制度が平成28年度税制改正により創設されました。
そのためには制約をクリアしていることが原則とし、相続で譲り受けた空き家を一人暮らしであった方が死亡した日以降、3年を経過した日に属する12月31日までに所有資産を移転した場合に適用されます。
空き家を無くすことが大前提の制度ですので、死亡して後に空き家となる恐れがあるケースにのみ適用します。
次に、昭和56年5月31日以前に建築された建物とその敷地であれば対象となります。
この場合、建物を壊して敷地のみにしてから所有資産を移転するのか、建物の耐震基準満たすためにリフォームしてから所有資産を移転しなければなりません。
次に、亡くなった方から不動産を相続後から譲渡するまでの間は空き家でなければなりません。
相続後、賃貸用物件として利用された場合と、土地を駐車場として貸していた場合は認められません。
この制度は原則空き家問題を解消する意図で作られた制度ですので、建物や土地を活用できているのであれば空き家にはならず特例は不要であると判断されるからです。
適用するためには、被相続人居住用家屋確認書を交付し、確定申告書に添付しましょう。
最後に、老人ホームなどへの入居者も適用となる税制改正が平成31年に行われました。
相続が行われる前でも、居住用として親が家財道具や衣類を置いており利用していた場合については特別控除に該当します。
条件は、被相続人が老人ホームに入居した時点で、介護保険法に規定する要介護認定を受け、相続が行われる直前まで老人ホームに入所していた事実がある場合にのみ該当します。
この場合、誰かに不動産を貸して収入を得ていたり、本人以外の者が住んだりしていない場合に限ります。
また、建物と土地の合計価格が1億円を超えないことが制約とされていますのでこの点にも注目しておきましょう。
2回以上に分けて売却した場合についても、合算した金額が1億円を超えるのであれば適用外となります。
小規模宅地等の特例について
小規模宅地等の特例
亡くなった人が自宅や店舗、貸アパートなどとして使用していた宅地を相続した場合、土地評価額を一定の面積までは最大80%減額できるという制度です。
2億円の不動産を相続で取得した場合、相続税評価額は4,000万円に減額されますのでかなりの節税効果が期待できます。
減額される割合については以下の通りです。
相続する直前における宅地等の利用区分 | 限度面積 | 減額割合 | ||
---|---|---|---|---|
被相続人等の事業の用に使用された宅地等 | 貸付事業以外の事業用の宅地等 | 400m² | 80% | |
貸付事業用の宅地等 | 一定の法人に貸し付けられ、その法人の貸付事業用の宅地等 | 200m² | 50% | |
被相続人等の貸付事業用の宅地等 | 200m² | 50% | ||
被相続人等の居住用の宅地等 | 330m² | 80% |
出典:国税庁 No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)
小規模宅地等の特例を受けるためには、条件に該当しているか確認してください。
特定事業用宅地(自宅用)
被相続人が居住していた、または被相続人と生計を一つにしていた親族の居住用宅地などを、相続人が取得した宅地などのこと。
特定同族会社事業用宅地等
相続お開始直前から、相続税の申告まで一定の法人事業用として使われていた宅地のこと。
特定居住用宅地等(事業用)
被相続人または、被相続人と生計を一つにしていた親族が事業をしていた宅地など。
貸付事業用宅地等
被相続人または、被相続人と生計を一つにしていた親族が貸付をしていた宅地など。
確定申告の方法
土地を相続して利益が出た場合は、確定申告をしなければなりません。
相続した土地を売却したら必ず確定申告が必要か?
相続した土地は所得にはならず、「継承」扱いになるため確定申告に記入しなくても問題ありません。
利益が出ない場合でも、先ほど紹介しました3年10カ月以内に売却したことで受けられる、取得費の特例に該当するのであれば確定申告は必須です。
また、売却したことで損失が出てしまっても給与所得や他の所得と損益通算ができます。
この場合においては確定申告しておいた方が得策でしょう。
亡くなった方が賃貸を所有していた場合は、個人事業の開業や廃業届出書や青色申告承認申請書の届け出などの手続きが必要になります。
賃貸不動産の場合は、収入を生む資産となりますから所得税の確定申告は行わなければなりません。
確定申告は、土地を売った次の年の2月16日~3月15日の間に、現住所を管轄する税務署に申告をおこないます。
どこで申請すればよいの?
申告の方法は、税務署の窓口に提出する場合は所定の申告書に記入して提出しますが、申告する期間が1カ月と期限が短いため、この期間は混雑が予想されます。
他の方法としては、郵送や時間外文書収受箱へ投函、または電子申告。e-tax(納税システム)も利用可能です。
確定申告に必要な書類などについて
確定申告をおこなう際に必要となる書類と納税方法についてご説明いたします。
必要となる書類は以下のものです。
- 確定申告書
- 譲渡所得の内訳書
- 売買契約書のコピー
- 仲介手数料など譲渡費用が分かる領収書のコピー
- 取得費や取得時の経費が確認できる資料
- 譲渡した土地の全部事項証明書
などが確定申告を行う際に必要となります。
上記の書類までは相続した不動産を売却した後におこなう確定申告では、全員が用意する書類になります。
特別控除などを適用する方は、これらの書類とは別に特例を受けるための証明書を添付しなければなりません。
特例を受ける場合は、書類の数が多くなりますので用意するためには時間が必要になりますが、確定申告の期限は1カ月間だけです。
もし、確定申告を申告する期限を超過した場合は、無申告加算税や延滞税などを支払うことになります。
まとめ
相続した土地を売る時にかかる税金と手続きについて解説いたしましたが、さまざまなケースにより税金が控除される特例や条件などがあることをお分かりいただけましたでしょうか?
はい!勉強になります!
土地や建物などの不動産を相続し売却する手順は、相続人が複数いる場合は遺産分割を行い、不動産の所有権移転に伴う登記を行います。
そして、売却を仲介する不動産業者と契約して売却後、確定申告を行うというのが一連の流れです。
確定申告までの手順には、さまざまな法律問題が関わり、権利関係が複雑になると個人では対応しきれません。
不安に感じたり、分からなくなったりした場合には専門家に依頼することがおすすめです。